2011年3月24日(木) ソーシャルメディアと「食」

テーマ:「ソーシャルメディアと『食』を考える」

 

関西を代表するお二人のメディアの方にご登場いただいて、現在のメディアの状況と『食』について、さまざまな角度から、大いに語っていただきました。

 

お迎えしたのは、「関西ウォーカー」編集長の玉置泰紀さんと毎日放送プロデューサ

ーの本郷義浩さんのお二人。

 

20世紀も終わりの頃に登場したインターネット。

それからわずか20年で、私たちの情報環境は一変しました。これは19世紀から20世紀にかけて整備されてきた郵便や電話などの通信手段に匹敵するのか(しないのか)。

 

さらには映画、ラジオ、テレビといったメディアと同列に考えられるところまで来たのか(あるいは、まったく違う次元のメディアなのか)。

 

さまざまなテクノロジーがそうであるように、所詮、人間の作った道具、仕組みだから、過大にも過小にも評価すべきではないかもしれない。でも、流行モノだから気にはなります。

ここはひとつ、地に足がついた状態で、クールに、今メディアにおきていることを見てみたい。そして、インターネットから生まれた「ソーシャルメディア」と「食」の今後についても考えてみたい、そんな思いで、お二人をスピーカーをとしてお迎えし、大いに語っ

ていただきました。

 

参加者の皆さんとも活発な意見交換、議論ができ、大いに盛り上がりました。

 

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スピーカーのお二人のプロフィール:

 

玉置泰紀さん

「関西ウォーカー」編集長。大阪府出身。産経新聞大阪本社に入社。

神戸支局を皮切りに、社会部で所轄回りの後、府警本部捜査1課を

担当。7年間勤めたあと、31歳で、福武書店(現ベネッセ)に転

職。月刊の女性誌「カルディエ」の創刊に加わる。「たまごクラブ」

「ひよこクラブ」の準備に携わった後、33歳で角川書店に再転職。

東京版の「シュシュ」創刊に加わる。「九州ウォーカー」創刊、後

に同誌編集長、さらに、「東海ウォーカー」、「大人のウォーカー」

(こちらも創刊)の編集長を経て、平成20年の4月に、17年ぶ

りに大阪に戻り、現在に至る。「九州ウォーカー」時代は、長崎市

の故伊藤一長市長の元、同市観光専門委員、「東海ウォーカー」時

代は、愛・地球博の食の専門委員、「大人のウォーカー」時代は、

経団連の観光専門委員などを務めた。コンプリートするほど好きな

ものは、ホームズシリーズにチャンドラー、ビートルズとストーン

ズ、フー。

http://www.walkerplus.com/kansai/

 

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本郷義浩さん

毎日放送プロデューサー。京都府出身。テレビ制作局所属。料理情

報番組、音楽番組、歴史紀行番組、ドラマ、アート系の番組など数

々のテレビ番組を担当。「あまから手帖」に食のエッセイ「Pの細

道」を連載中。 毎年、5月に写真展を大阪市内のカフェで開催して

おり、世界の都市をテーマとしている。 麻婆豆腐研究家、伊藤若冲

研究家、京懐石研究家、右脳左脳ノート研究家を自称。 

現在「水野真紀の魔法のレストラン」を担当。

http://www.mbs.jp/mahou/

これまでの主な担当番組「あまからアベニュー」「近畿は美しく」

「美の京都遺産」「若冲降臨 増殖する細胞」「芸術都市パリの100

年」「真実の料理人シリーズ」「京料理、動く。」「占い師100人」

「チュー'sDAYコミックス 侍チュート!」「インスタントラーメン発

明物語 安藤百福伝」「音舞台シリーズ(プロデュース演出、2000

から2009年まで)」

 

 

2011年2月25日(金) 特別企画:呉美保監督をお迎えして

ことし最初の大阪<あべの>塾は、新藤兼人賞を受賞された映画監督・呉美保さんをお迎えしました。

 

 

呉監督とは、辻調映画部が、映画「オカンの嫁入り」でご一緒させていただきました。

 

寒い京都・太秦の撮影所で。辻調の日本料理教授の清水先生たちのチームが参加しました。

 

今回の辻調塾でも、呉監督のお話のあとは、清水先生が登場して対談風に、撮影の裏話をしながら、「物語のなかのリアル」な食の景色について熱く語っていただきました。

 

また、監督のトークでは、こんなお話を。ここに転載させていただきます。

 

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・お茶漬の味(監督:小津安二郎)

育った環境も価値観も違う男と女が、見合い結婚によって夫婦になったがゆえに、ろくに愛情が育つことなく、冷めた夫婦となり、、、、といった感じの物語です。

夫婦って、たとえ恋愛結婚であったとしても、共に生活をしていくと、相手の欠点が目につくようになり、許せない部分も出て来るもの。他人同士が結婚をして「夫婦になる」ということはどういうことか?小津監督はその答えとして、まさにタイトルの「お茶漬の味」を提示する。

物語のラストシーン、すったもんだの末に、夫婦はお茶漬を食べるシーンはちょっとしたサスペンス映画のよう。お茶漬を食べながら、それまで向き合ってこなかった夫婦は、やがてそれぞれの本音をシンプルに吐露し合う。まさに二人が食しているお茶漬という、ごくごくシンプルな食事と重なって、映画を観る側をグイグイと惹き込む。

 

(犬のつぶやき)夫婦愛について語る監督の真剣なまなざしに、どっきりしました。

 

 

・マルサの女2(監督:伊丹十三)

伊丹監督の作品はすべて人間の「欲」について描かれている。

「マルサの女」シリーズはまさに「金欲」。「食欲」という部分では「タンポポ」が上げられがちだし「タンポポ」は確かに食のシーンが多い。だから「タンポポ」挙げてもよかったのだが「マルサの女2」を挙げたのには理由がある。この作品の冒頭のシーンは私にとってちょっとしたトラウマだ。小さい頃、父がビデオショップで借りて来て見ていて、たまたま居合わせたのだけれど、冒頭、おっさんたちがタラバガニをむさぼっているシーンに目が釘付けになった。そして瞬時に、そのおっさんたちがとても強欲な「悪者」だという判断ができた。ただタラバガニを食べている姿を描くだけで、その人がどんな人なのか、わからせてくれたのだ。

当時小学生の私は、まさか映画監督なんて志してはいなかったけれど、今、私の作る映画に「食」が欠かせない要因は、大いにここが原点だと考えられる。

 

(犬のつぶやき)監督、すごい小学生だったのですね!

 

 

・ほえる犬は噛まない(監督:ポン・ジュノ)

団地内で飼い犬が次々と行方不明になる事件を、ペドゥナ演じる女の子が解決しようと奮闘する、ブラックユーモアサスペンス作品。

と、作品の内容はともかく、ペドゥナとその友人で、雑貨屋を営む巨漢女が、ラーメンを食べるシーンがあるのだが、その食べ方が実に韓国的!

ちなみに韓国って、インスタントラーメンしかない。すべて乾麺で、日本みたいに生ラーメン屋はないのが不思議。そのうち生ラーメンブームが起きそうなものだが。ビジネスチャンスか?

 

(犬のつぶやき)ホラーですワン!でも、たしかに、鍋から豪快に食べる韓国の食の景色、男前でほれますね。ペ・ドゥナ、ラブっす。

 

・初恋のきた道(監督:チャン・イーモウ)

文化大革命が起こる少し前の時代の、中国の田舎町を舞台にした、純愛物語。田舎町にやってきた都会的な先生に一目惚れをしたチャンツィー演じる女の子が、先生のために毎日弁当を作り、やがて先生がうちに食事にやってくることになり、料理を作り、、、、

その料理をする描写が、何とも丁寧で、料理を盛りつける器や、包む布や、全ての色彩が見事で、中国の大自然のロケーションも手伝って、実に映画らしい映画。人が人を愛する気持ちを、うまく食に込めている。

 

(犬のつぶやき)まるでCMのようなシズル感と光の美しさ。料理や、それをとりまく空気感が素晴らしいですね。しかし、あんなカワイイ、チャンツィーから離れて都会に戻って行くこの男。まったく納得できません。

 

 

・父、帰る(監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ)

音信不通だった父親が12年ぶりに帰ってきたことで戸惑う息子たち。そして、そんな息子たちを連れて父親は旅に出る。父の思わくは息子たちに伝わることなく、旅先で悲劇が起こる。

ベネチア映画祭で最高賞をとった作品だけあって抑制されたセリフが見事。父が帰って来た日に家族で食卓を囲むのだけれど、そのシーンの料理が全くもって美味しそうじゃない。やはり「食」というのは「人の心」あってのものだと、この映画をみて痛感する。

 

(犬のつぶやき)この不味そうな食事の景色。これは、アキ・カウリスマキの不味そうに昼間っからビールをすするオッサンたちの景色にもつながりますね。空気のなかから色をぬいて、不味く冷めた料理を描く。「食の景色」もなかなか深いですね。

 

・酒井家のしあわせ(監督:呉美保)

現場で、味噌汁の具にキャベツは有りか?論争になったこと。

「マルサの女2」から影響を受け、黙々とカニを食べるシーンを描きたかった自己満足。

たまに食べるラーメン&ライスの美味さについて。

 

(犬のつぶやき)もう、最高傑作ですよ。まだの方は、いますぐレンタルして観て下さい。脚本も監督が手がけていますが、いやあ、脚本も役者も料理も光っている作品です!